消費者が安心して不動産取引ができる不動産流通市場の設備

中古不動産取引における情報提供の促進

現在の中古不動産取引では、売主や宅建業者からの物件に関する情報開示が不十分であり、また買主に対しての情報提供やコンサルティングも十分でないため、消費者が本来のニーズに合致した物件を選択しにくい状況にあり、物件に関する情報不足による取引への不安が、中古住宅取引を阻害する要因となっています。
一部の先進的な事業者では、売主の情報開示の補助や買主への幅広い情報提供などを行いうことで、不安を解消し中古不動産の取引につなげるという取組みが見られますが、成功事例が十分に蓄積されておらず、未だ一般的ではありません。
そこで、宅建業者を中心とした不動産関連事業者による連携体により、消費者への情報提供の促進等に係る先進的な取組みが進められました。

なお、この取組みは国土交通省から委託を受け、(株)価値総合研究所が実施した「平成26年度中古不動産取引における情報提供の促進に係る調査検討業務」で募集し、採択された連携体によって行われました。

また、本事業を行うにあたり、有識者等からなる評価委員会を設置し、各連携体の活動へのアドバイスが行われております。

<評価委員会委員>

  • 委員長
  • 中城 康彦 (なかじょう やすひこ)
  • 明海大学不動産学部長 不動産学研究科長 教授
  • 安達 功 (あだち いさお)
  • 日経BPインフラ総合研究所 所長 上席研究員
  • 三津川 真紀 (みつかわ まき)
  • 一般社団法人次世代不動産業支援機構 代表理事

情報提供の取組み

本事業では、様々な消費者への情報提供の取組みが行われましたが、それらを大きく分けると、以下のような取組みが見られました。

事業伝達におけるツール開発

消費者に情報を生成することや、情報を伝達することの重要性を伝えるためのパンフレット等の開発、不可価値のついた物件であること、安心な取引を行うためのサービス提供ができる事業者であることを消費者に対して表示する取組み、情報を一つのファイルとして集約して消費者に伝達する取組みなど、消費者に情報を伝達するための様々なツールの開発やその有効な活用方法の検討が行われた。

中古不動産取引モデルの中での情報伝達の取組み

昨年度までに開発された取引モデルや本年度に新規開発した取引モデルの中で、上記したツールを活用し、より効果的に情報を生成し、消費者に伝達するための取組みが行われた。

さらに、実務現場での活用も行われ、実際の取引事例も生まれている。

<各連携体の取組みの特徴>

■情報提供のタイミング

情報の提供のタイミングによって、その情報がもたらす効果も異なると想定されることから、各連携体で検討が行われました。

  • ●売却・購入の発意の段階
  • ●販売開始時
  • ●販売開始~購入申込時
  • ●購入申込~売買契約締結時
  • ●売買契約締結~引渡し時

■情報の内容

インスペクション等により生成された物件の性能情報だけでなく、様々な情報伝達の取組みが行われました。

  • ●制度・商品が利用可能であることの情報
  • ●付加価値物件であること、具体的な付加価値情報
  • ●情報収集の発意を促す情報
  • ●制度・商品の具体内容・取引において必要な知識・情報
  • ●物件情報に加えて、近隣物件比較情報、生活関連情報

■情報伝達の媒体(主体)

宅建業者等の「人」だけでなく、ロゴマークや認定書等により、検査された物件であることや、付加価値のついた物件を取り扱っている店舗であること、一定の研修を受け認定を受けた事業者であることを等「見える化」することで消費者に情報を伝達する取組みが行われました。
また、情報伝達者としての「人」についても、宅建業者やインスペクターなど、連携体の中での様々な立場の構成員が情報を生成し伝達する主体となる取組みが行われました。

全国17連携体

本事業では、下図に示す17連携体が採択されました。

No. 応募事業者名
(連携体名称)
事業の名称 協議会の紹介
1 北海道既存住宅流通促進協議会 北海道既存住宅流通市場活性化事業 北海道既存住宅流通促進協議会は、不動産業者及び不動産関連事業者、資格者等が、それぞれの専門分野、関連情報を集約し消費者に提供することで、より安全で安心な既存住宅の取引を実現し、既存住宅の流通活性化を図り、健全な市場の発展に貢献することを目的に設立。
既存住宅流通市場の活性化を図るには、専門家によるインスペクションの実施、かし保証保険の付保、住宅履歴の保存等、物件の質に関する情報提供が重要になり、宅建業者に消費者との橋渡し役が期待されるが、これらの情報が宅建業者にも浸透していないため、消費者にも伝達されていない。そこで、宅建業者や消費者への情報提供、利用しやすいインスペクション及び物件履歴情報を蓄積する仕組みを構築し、物件の質に関する情報開示を推進することにより、既存住宅流通市場の活性化を図る。
2 東北地区中古住宅流通促進協議会
既存住宅アドバイザーと認定リフォーム事業者の適切な役割分担のもと、インスペクション、瑕疵保険、リフォーム等のサービスを活用し、物件に関する情報を明らかにした上で中古住宅取引を円滑に進めるための先進的取組 東北地区中古住宅流通促進協議会は、中古住宅取引における様々な知識を持った不動産事業者(既存住宅アドバイザー)を核として、協議会認定リフォーム事業者による住宅診断により必要なリフォームが行なわれ、既存住宅瑕疵保証保険が付保された、消費者が安心して取引きができる中古住宅流通ビジネスモデルの普及を推進しております。
3 首都圏既存住宅流通推進協議会 既存住宅流通時における適正情報伝達事業 【事業の目的】
中古住宅流通時に消費者とって安全で心な取引モデルを模索し、その成立の為に協業すべきプレイヤー知識・技術力向上と、取引モデル確立を目指します。

【既存住宅流通活性化推進教育研修等事業】
既存住宅流通活性化の過程では、そのサービスを提供する事業者に横断的な知識が必要になってくる。本協議会では、既存住宅流通活性化に携わるプレイヤーの知識・技術力向上を実現する為に、各団体が既存で実施している教育研修プログラムを相互提供することで、団体傘下の企業に対し教育・研修の場を増やし早期実現を目指す。
また、「かし保険」や「住宅履歴」等、中古の安心取引に欠かせないこれら制度を活用し、その普及・推進に努める。これら制度の普及の為にも「既存住宅アドバイザー」「既存ンスペクター」という独自の認証事業を行い、国の政策と齟齬無く、かつ積極的な利用・運営に努める。
4 良質中古住宅推進協議会 売却時情報開示の促進及び循環型宅建業務推進事業 現在、国土交通省では、新築の建設だけではなく、現存する中古住宅の流通を倍増させる計画を実行中です。そこで、国土交通省は、宅建業者が他の専門家と連携して行う、売主による物件情報開示や、買主による物件情報収集の補助等に係る先進的な取組みをモデル事業として支援することとし、「良質中古住宅推進協議会」がその採択を受けました。
このモデル事業を通して、あるべき中古住宅の価値を高める市場に流通させる取組みを行っております。
5 ウェスト東京不動産流通ネットワーク ウェスト東京不動産流通ネットワーク・インスペクトハウス流通モデル 東京西部エリアの宅建業者8社を中心に、中古住宅が安心・安全かつ信頼の下に取引が行われる地域づくりを目指し、住宅関連事業者と共に組織された中古住宅売買支援事業者連携体、それが、私たち「ウェスト東京不動産流通ネットワーク」です。(以下、「WES-T」という)
私たちWES-Tは取り扱う全ての中古住宅に対して点検を実施いたします。点検を行った全ての住宅は、ラベリングされ、住宅履歴情報ファイルにデータの保管を行い、その後も定期的に点検を実施していきます。
WES-Tは、このような取組により、これまで重要視されていなかった住宅点検に対する消費者の意識向上に努めてまいります。
私たちの取組が、地域住宅の資産価値を守り、地域社会における暮らしにも貢献していくことが出来ればと考えております。
6 富山県中古住宅流通促進協議会 中古住宅のブランド化による流通推進に向けて 宅建業者が中心となり、インスペクション業者、リフォーム業者、アフターサービス提供者等と連携し、中古住宅の流通促進と空き家解消に向けて活動することを目的として、平成24年に国土交通省に選定された組織です。
10の不動産関連事業者と6つの金融機関からなる構成事業者が各々の専門分野を活かし、中古住宅市場の活性化に向けて取り組んでいます。
7 良品R住宅推進協議会
良品R住宅制度を活用した情報の収集・公開連携システムの整備 当協議会は、ストック社会における中古住宅流通市場並びにリフォーム市場の環境整備を図ることを目的に山梨県、長野県、新潟県の宅地建物取引業協会が設立した組織で、甲信越地区の中古住宅市場において消費者に安心・安全な中古住宅を提供するため、宅建業者を中心に他の住宅市場関係者が効率的かつ円滑に連携できる体制の整備と事前のインスペクションによる住宅の情報収集の他、瑕疵保険付保や住宅履歴情報の蓄積等の一定の条件を満たす中古住宅のブランド化を行う良品R住宅制度を設け、宅建業者が媒介する売買目的の既存住宅にこの制度の活用を推進し、中古住宅の流通促進および透明性と継続性のある中古住宅市場の構築を目指しています。
そして現在は、この制度の広域的な活用も同時に推進しています。
8 静岡不動産流通活性化協議会 情報ツールを活用した中古住宅流通促進 静岡不動産流通活性化協議会は、増加する不動産ストックの流通促進を目的に、平成24年9月、14の事業者および団体により発足しました。協議会では、国土交通省モデル事業実施等を中心に、現在は21の専門事業者および団体が連携して活動を行っています。
26年度は、この「中古不動産取引における情報提供促進モデル事業」の他、「住宅団地型既存住宅流通促進モデル事業」の2つの事業に取り組みました。消費者への情報提供のための取組みと空き家が発生している郊外型住宅団地での空き家の利活用のための取組みは、「安心・安全な中古住宅の流通」という点において共通しています。
27年度は、この2つの事業を継続、さらに「空き家対策部会」を立ち上げます。部会では、静岡県および県内市町と連携して課題に取り組む予定です。
9 既存住宅品質サポートセンター 『中古住宅調査書』の作成環境の構築とユーザー向け情報開示サイト『クラシロー』の拡充 中古住宅の売買時に、売主や仲介業者と買主の間にある情報量の格差(情報の非対称性)をなくすことで、安心安全に取引できる環境を作ることを目指します。そのためにネット上に『住まいの情報ボックス・クラシロー』を開設し、売買時に知っておくべき情報の項目や入手先を公開しています。
また、住宅の防犯診断まで含めたホームインスペクションや既存住宅売買かし保険の普及活動もおこなっています。
当センターの活動に賛同いただける不動産業者・工務店などは、認定事業者として公開し支援しています。
10 近畿不動産活性化協議会 「住宅ファイル」を用いた住宅流通における消費者への情報提供の促進策の検討 インスペクションおよび白蟻検査の報告書を基に、中古住宅の経済的残存年数を把握し住宅の適正価格を示す、第三者たる専門家の統一された調査報告スキームとして「住宅ファイル」を構築しました。
売買目的の不動産情報を精緻に示すことで、住宅の購入に際し買主が抱く不安を払拭し、取引の円滑化を促すことを目的としています。 リフォームローンのためのリフォーム後の建物価値の把握やリバースモーゲージを見据えた金融機関向けに取引当事者が発信する情報ともなり得ると考えています。
11 大阪不動産コンサルティング事業協同組合
中古マンションの流通促進のためのマンション管理情報活用システム整備事業 (一社)大阪府不動産コンサルティング協会は、国土交通大臣登録資格の「公認 不動産コンサルティングマスター」をメンバーとする組織で、1994年3月に設立しました。
不動産に関して高い知識と豊富な経験を持つ専門家集団として、不動産の有効活用、相続対策、不動産流通、空き家問題などの課題に取り組んでいます。
不動産流通に関する取組では、現在、中古不動産流通における情報の整備と情報提供を促進するための「中古マンション管理情報活用システム整備事業」を実施しています。この事業は、中古マンション取引において消費者が必要とする「マンションの維持管理情報」に着目し、不動産流通の立場から維持管理に関する指標を整備することによって中古マンションの流通促進に寄与することを目的にし、マンション管理情報項目の取得・蓄積、重要度の分類や取捨選択、消費者への効果的な提供方法等のシステム整備を研究しています。
12 兵庫既存住宅活性協議会
インスペクション、査定評価等の情報提供の円滑化事業 当協議会では、中古住宅の流通にかかわる関係団体と連携しながら、建物の耐震性の向上など、消費者に安全安心でかつ良質な中古住宅の提供をめざしています。
この目的を達成するため、国、県、市町の住宅施策を踏まえつつ、関係業界と円滑に連携した仕組みの構築を行い、中古住宅の建物調査を行うフェニーチェパックの運用や兵庫県内の空き家の利活用をうながすための空き家の総合相談窓口事業を実施しています。
13 不動産コンシェルジュ中国地区協議会 中古住宅流通市場整備・活性化事業 2020年までに中古住宅流通市場・リフォーム市場の規模倍増(20兆円市場)の実現に向け、国土交通省が2012年7月に事業者募集を行い選定されたことを受けて、2012年10月4日に不動産コンシェルジュ中国地区協議会を発足いたしました。
不動産コンシェルジュ中国地区協議会では、中古住宅の流通とリフォームの促進により、国民の住宅に関する選択肢を増やし、若い世代でも無理のない負担でニーズに応じた住まいの購入やリフォームを行うことができる住宅市場の整備を目指しています。
コンシェルジュとは、「総合世話係」という意味があります。当協議会では、宅建業者が中心となり、住宅情報と各サービスや制度をマッチングさせることを期待して、協議会の名前に取り入れ、以下のテーマで事業を推進しています。
14 四国中古住宅流通促進事業協議会
四国中古不動産取引情報提供促進モデル事業 四国連携では、売主へは後々まで心配にない売却を提案し、買主へは中古物件ながらインスペクションと呼ばれる「建物目視検査」等で、中身の見える化を訴求します。 またインスペクション実施物件に、金融機関の提携ローンも使用可能にしました!
15 一般社団法人日本不動産流通アソシエ
情報インフラ(仮称:ハウスマーケット)を共有する事業者連携(エリアユニット)による消費者への購入判断情報の提供事業 不動産売買プロセスで使える、物件情報を比較できるサービスを提供することでエージェントの支援を行います。
物件の相場を比較・分析することにより、購入のタイミングを逃さないよう消費者意識を高めます。また、比較検討しやすいので、中古物件を売買することへの安心感を高め、いろいろな制度や建物診断などの紹介・取次ぎ等、不動産売買のプロを紹介しております。地域を厳選し、不動産流通量の変動状況の調査、物件供給量と売却件数の変動調査など市場取引の分析を行い、中古住宅流通の活性化の計測なども行っております。
中古物件の売買に置いては、促進が進まない理由として、断片的な不動産物件情報により、相場がわからない点や適切なアドバイスを行う専門家の不足などが挙げられております。
アソシエでは、業者間が共同仲介により物件を囲い込む両手仲介は売主利益の損失と、市場相場の価格低下につながると考え、健全な市場を目指し活動を行っております。
16 住宅管理・ストック推進協会 使用価値に基づいた建物査定の実施と時間軸連携による消費者への情報提供体制の適正化・強化推進事業 消費者は取引物件に関する情報に加えて「知らないから怖い」という心理的負担を軽減するためにも取引自体の仕組みや安心して居住するための、そして物件購入者自身が将来その物件の売主になるという視点から維持管理の大切さについての知識や情報が得られる環境が必要である。そこで消費者が知っておくと不動産取引時に役に立つ「消費者向け説明ツール(説明ツール)」を作成しました。
今後、多くの宅建業者が説明ツールを使うよう、普及活動を行っていきます。
17 OKINAWA型中古住宅流通研究会 中古流通ネットワーク「沖縄不動産コンシェルジュ(仮)」の開設 中古物件の適正な流通促進、良質な住宅ストックについて、異分野専門家同士による情報交換・議論のできる場として設立いたしました。国交省が発表した中古住宅・リフォーム トータルプランの概要でもあります ”2020年までに中古住宅の市場規模を現在の10兆円から、20兆円に倍増する” に同調し、2020年までの活動を目指します。
中古物件を購入する消費者が有益な情報を知らずに損をすることを減らし、安心で安全な不動産取引の活性化に繋げていくツールとして「おうちクリニック住宅カルテ」を用意しています。

全国17連携体の成果

平成26年度の各連携体の取組み成果について、平成27年3月18日に「成果発表会」を開催し、各連携体の代表者から成果についての発表がありました。
当日配布した発表資料をPDFファイルでご用意いたしましたので、是非ご覧になって下さい。また、当日の発表の様子は動画でご覧いただけます。

  発表資料 動画
北海道既存住宅流通促進協議会
東北地区中古住宅流通促進協議会
首都圏既存住宅流通推進協議会
良質中古住宅推進協議会
ウェスト東京不動産流通ネットワーク
富山県中古住宅流通促進協議会
良品R住宅推進協議会
静岡不動産流通活性化協議会
既存住宅品質サポートセンター
近畿不動産活性化協議会
大阪不動産コンサルティング事業協同組合
兵庫既存住宅活性協議会
不動産コンシェルジュ中国地区協議会
四国中古住宅流通促進事業協議会
一般社団法人日本不動産流通アソシエ
住宅管理・ストック推進協会
OKINAWA型中古住宅流通研究会